雑念不要の4分半

揚げたてを食べて欲しいから、唐揚げを揚げ始めるタイミングは、副菜の仕上げの時間。
下味をつけた鶏肉に衣をはたき、たっぷりの圧搾一番しぼりの菜種油に流し入れます。
肉達がのびのびと羽を広げるように膨らんでいきます。
彼らがしばらく外輪内輪両方のガス火に揚げられている間、副菜の味付けをし、次に揚げる肉達の衣付けをします。
油の音の強弱に合わせて火加減しながらの約4分半、その繰り返し。
油の中の彼らをやたらに触ってはいけない。
自分達で油の中を泳ぐのを邪魔しないのがいい。
揚げ上がりの合図は、ある時から大人しくなる油の音と、箸で持ち上げた時に箸伝いにジクジクと返される感触。
ジクジク返されるたびに、油と会話している感覚になり、仕事を終えた油には、お疲れさんと言って火を落とします。